逃げられるものならお好きにどうぞ。
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「慎二さんっ! あの、これ……」
今日は二月十四日。バレンタインデーだ。
美代が綺麗にラッピングされた箱を手渡す先には――彼女の想い人である皇慎二が立っている。
「……オマエ、料理なんてできたのか」
僅かに驚いた様子で瞳を瞬かせた慎二に、美代はムッと下唇を突き出す。
「わ、私だって、料理くらい……できますよ」
もごもごと話す美代の態度を見て何かを察したらしい慎二は、ふっと微笑んだ。
「……そうか。チョコ、ありがとな」
最後に美代の頭をぽんと一撫でした慎二は、美代に背を向けてその場を立ち去った。
そして、そんな慎二の脳裏には――自身の部下の一人でもある男と、その恋人である女性の顔が浮かんでいた。
彼女とは最近知り合ったばかりだが、美代とも親しい間柄のようだったし、きっと彼女と共に作ったのだろうと、どこか確信めいたものを感じて――手元に視線を落とした慎二は、人知れずに口許を緩めていたのだった。