逃げられるものならお好きにどうぞ。
「とりあえず、またゆっくり話そ。今日は先に戻るね」
「そうね。かわいい後輩ちゃんが待ってるもんね」
「また連絡する」と言ってくれた三奈に手を振って、私はタイミングよく降りてきたエレベーターに乗り込んだ。
七のボタンを押して、ふぅ、と一息つく。
――甘える、かぁ。
黒瀬くんと付き合ってから、年の差をそこまで気にしたことはなかったけど、黒瀬くん的にはどう思ってるんだろう。年の差を気にしたりすることってあるんだろうか。
……うーん、黒瀬くんは特に気にしたりしなさそうだな。
黒瀬くんに甘えられているのかと聞かれると、そもそも私自身の性格が素直じゃないっていう自覚が十分にあるから、まぁあれだけど……でも、黒瀬くんに大切にしてもらっているってことは十分すぎるくらいに感じているし、私は今の関係に満足している。
そう考えると、私は無意識のうちに、黒瀬くんという存在に甘え切っているのかもしれない。
……うん。むしろ私がもっと黒瀬くんを甘やかすことのできる存在になるべきなんじゃないかなって。今、気づいてしまった。
エレベーターが目的地のある七階に到着した。
佐々木ちゃんが待ち構えているであろうデスクに向かいながら、次に黒瀬くんに会う時には、もう少し大人の余裕というか、黒瀬くんが甘えられるような空気作りというか……そういうものを意識してみてもいいかもしれない、なんて。
そんなことを考えた。