逃げられるものならお好きにどうぞ。


***


「お、おわった……」

「香月さん、ずみません~……」



現在時刻は二十二時を過ぎている。

当然外は真っ暗だし、このフロアに残っているのも、私と佐々木ちゃんの二人だけだ。


今日は久し振りに定時で上がれそうだったから、お昼休憩のタイミングで黒瀬くんには連絡を入れて、仕事帰りにバーに寄ることを伝えていた。

久しぶりに会えることに、私は密かに浮き立っていた。


だけど、あと一時間で定時になるといったタイミングで、それ(・・)は起こった。



「何だねこれは!」と――係長の怒声が私の耳に飛び込んできたのだ。

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