逃げられるものならお好きにどうぞ。
「佐々木くん、この書類、一枚目から役職名の欄が全て間違っているぞ。これ、昨年のものじゃないのかい?」
「えっ、ウソ……そ、そんなはずは……」
「それに添付資料の見積もりの計算も、すべて桁がずれているじゃないか!」
「っ、す、すみません……!」
「まぁまぁ、そんなに怒らなくても。でも困りましたね。これは明日の朝一には先方に送らないといけないので……」
「あっ、あの! 今日中には修正しておきますので……!」
係長の言葉に続いて、課長の困りきった声も聞こえてくる。
ウチの部署は八人と少人数ではあるけど、比較的穏やかで優しい人が多い、と思う。
係長も仕事に関しては厳しい人だけど、普段は普通に優しいし。
だけど今日は二人が有給を取得していて、ただでさえ人手が足りないのだ。
佐々木ちゃんを手伝いたい気持ちはあれど、皆自分の業務で手一杯なのだろうことが、漂う気まずい空気で何となく察せてしまう。
――仕方ない、か。