逃げられるものならお好きにどうぞ。
「っ、何で黒瀬くんが此処に!? というか、いつからいたの……!?」
その頬に触れれば、予想通りと言うべきか、やっぱりその身体は冷え切っているようで。
その腕を掴んで部屋に招き入れ、暖房の設定温度を三十度まで上げて、寝室から持ってきた毛布を有無を言わせずに黒瀬くんに巻き付けた。
「もうっ、何で外で待ってたの? 確か黒瀬くん、今日は二十時で上りがだって言ってたよね? ……まさか、それからずっと待ってたとか言わないよね?」
「……ん?」
――あ、これは絶対に待ってたやつだ。
「笑って誤魔化さないでください。……本当に風邪引いちゃうでしょ」
「ごめんごめん。少しだけ待って帰ってこなかったら、諦めて帰ろうと思ってたんだけど……気づいたらこんな時間になってたんだよ」
へにゃりと眉を下げて微笑んだ黒瀬くんは、少しだけ体温を取り戻した身体で、私をそっと抱きしめる。