逃げられるものならお好きにどうぞ。


「百合子さんは、喧嘩とは無縁そうだよね」

「まぁ……それはそうだね」

「すぐやられちゃいそう」



何故だかクスリと笑われてしまった。

そりゃあ黒瀬くんからしてみたら、私なんてちっちゃいありんこみたいな存在に見えるのかもしれないけど……何だかちょっとだけ、悔しくなってくる。



「私だって本気を出せば……案外すごい力を秘めてるかもしれないでしょ?」



黒瀬くんの肩に「えいっ」ってグーパンチをお見舞いすれば、それを受けた黒瀬くんは、わざとらしく「うっ……」って肩を抑えてやられた振りをしてくれる。


何だかそんなやりとりに恥ずかしくなってきて、私はフイッと顔をそむけた。



「……もうっ、子ども扱いしないでよね!」

「百合子さんが先にやったことなのに、照れてるの?」



――何か、拗ねているみたいな口調になっちゃった。


自分の言動にますます気恥ずかしくなってくる。

そんな私の言葉を聞いた黒瀬くんは、また可笑しそうに笑っている。

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