逃げられるものならお好きにどうぞ。
「……うん、そうだね。仕方ないから、今回はお邪魔虫たちの同行も許してあげよっか」
「ちょっと椿、誰がお邪魔虫ですって?」
「ほら百合子さん、早く乗っちゃお。もちろん俺の隣ね」
美代さんの言葉をサラッと無視した黒瀬くんに促されて車内に乗り込めば、運転席には萌黄さんが座っていた。
バックミラー越しに目が合うとニコリと微笑まれるけど、黒瀬くんに目元をサッと隠されて、その姿は直ぐに見えなくなる。
「見なくていいよ。つーかお前が百合子さんを見るな。百合子さんが汚れる」
「いやいや、目が合っただけでそれは酷くない? 椿ってば、束縛が強い男は嫌われるぞ~」
「……へぇ、俺と百合子さんの旅行をめちゃくちゃにした張本人がそういうこと言うんだ? ちょっと痛い目見ないと分からないみたいだね?」
「いやいや、ちょっ、マジ運転中はやめてよ? おれら皆であの世逝きだからね?」
「ちょっと拓斗。下手な運転して慎二さんに何かあったら、ぶっ飛ばすわよ」
黒い笑顔で萌黄さんの肩に手を伸ばしている黒瀬くん。
焦った表情で首を横に振っている萌黄さん。
そして、そんな萌黄さんにガンを飛ばしている美代さんと、頭を痛そうに抑えながら溜息を漏らしている皇さん。
――これから不思議なメンバーでの京都旅行が始まるわけだけど、出発前から何ともカオスな空間が広がっていることに気づいてしまい、私は早くも皆で旅行に行くことを提案してしまったことを、少しだけ後悔しそうになっていた。