逃げられるものならお好きにどうぞ。
「……え、何なのこの人たち。普通に考えたら気を遣って二人きりにしてくれるよね。まさか三日間俺たちに付いてくるつもり? ……は? 無理。絶対に無理。百合子さん、今すぐ此処から逃げよう」
私の隣でニコニコと笑いながら黙って話を聞いていた黒瀬くんだったけど、一瞬でその顔から笑みを消し去ったかと思えば、私の手を掴んでこの場から逃亡を図ろうとする。
「逃がすわけないでしょ」
「だからさ、椿一人だけ楽しむなんてズルいだろ?」
「っ、離せ‼」
そして、そんな黒瀬くんの肩を、美代さんと萌黄さん両者がガッチリと掴んで引き止める。
――普段は落ち着いていて、余裕のある表情を見せることの多い黒瀬くんが、本気で嫌そうに顔を顰めて抵抗している。
黒瀬くんの珍しい姿を目にして一瞬呆けてしまったけど、周囲の人たちの視線を集めていることに気づいて、慌てて仲裁に入る。
「とりあえず、まずは皆でお昼を食べませんか? それからどうするかは、食べながら話しましょう」
「……まぁ、百合子さんがそう言うなら」
「そーだね。せっかく京都まできたのに、揉めてる時間が勿体ないし」
「分かったわ。それじゃあ、早くお店に行きましょ」
何とか落ち着いてくれた三人を見てひっそりと安堵の息を漏らしていれば、皇さんが隣までやってきて、労いの言葉を掛けてくれる。