逃げられるものならお好きにどうぞ。


「嬢ちゃん、お疲れさん」

「いえいえ」

「にしても……今回は本当にワリィな。邪魔した挙句に、コイツらの面倒まで見させちまって」

「そんな、皇さんが謝ることじゃありませんよ」

「……嬢ちゃんは本当に懐の広い女だな。文句の一つや二つ言ったって罰は当たらねーと思うぞ?」



皇さんが呆れを孕んだような溜息を漏らしながらも、優しい目で私を見下ろしている。

そしてそのまなざしを、また小さな言い合いを始めている三人に向けた。


私もその視線の先を辿れば、小さく悲鳴を上げている萌黄さんと、物凄く良い笑顔で萌黄さんの頭部をがっしり掴んでいる黒瀬くんに、その様を可笑しそうに笑いながら見ている美代さんがいて。



「ったく、アイツらはガキか」

「ふふ、本当ですね。でも……私、ちょっと嬉しいんです」

「嬉しい?」

「はい。黒瀬くんって、私と一緒の時はすごくしっかり者で、大人びた顔をしていることが多いんです。だから、あんな風にふざけ合ったりしている黒瀬くんは、年相応の男の子って感じの顔をしていて……何て言うか、すごく新鮮です」



二人きりの時には、私より年下のはずなのに、私よりもずっとしっかりしていて大人びた雰囲気を纏っている黒瀬くん。

だけど今は、無邪気な表情で萌黄さんたちと語り合っている。

嫌そうに顔を顰めたり、悪態を吐いてもいるけれど……それは心を許している相手だからこそ、だろう。

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