逃げられるものならお好きにどうぞ。


「よかった。それじゃあ……」

「え? っ、わ、ちょっと黒瀬くん……!?」



しょんぼり顔から一変して、ニコリと満面の笑みを広げた黒瀬くんに抱きかかえられた私は、そのまま布団の上に押し倒される。



「ちょ、ちょっと待って? 私まだ、心の準備が……」

「俺、百合子さんが嫌なことは絶対にしないよ。でも……百合子さんは、俺に触られるの、嫌?」

「……嫌、なわけないよ。ただ、その……」



――黒瀬くんは経験豊富そうだけど、対する私は正反対で、そういった経験はゼロと言っていい。だから、胸の中を占める恥ずかしさと、ほんの少しの恐怖心のせいで、どうしても身構えてしまうのだ。

< 282 / 544 >

この作品をシェア

pagetop