逃げられるものならお好きにどうぞ。
「く、黒瀬くん。誰か来たみたいだよ」
「……いいよ。居留守使っちゃお」
「でも……」
私の頬をゆるりと撫でた黒瀬くんは、再び顔を近づけてくる。
だけど――“ピンポンピンポンピンポーンッッ‼”
止むことなく鳴り続けるその音に、数秒、何かを堪えるようにグッと固まっていた黒瀬くんだったけど、渋々身体を起こして玄関に向かっていった。
私もその後に続いて、来客者を確認すべく扉の向こうに目を向ける。まぁ、大体の予想はついているんだけど……。
黒瀬くんが扉を開ければ、そこに立っていたのは、長い黒髪を後ろでお団子にしている萌黄さんだった。……うん、やっぱり予想通りだった。