逃げられるものならお好きにどうぞ。
「中々出てこないから、二人共寝てるのかと思ったじゃん。……っていうことで、これから皆で卓球でもしに行かなーい?」
「……何が、っていうことで、なのかは知らないけどさ。とりあえず、一発ぶん殴ってもいい?」
笑いながら青筋を立てている黒瀬くんに、萌黄さんは口許を引き攣らせる。
「……え˝っ、何々。もしかしておれ……お邪魔しちゃった感じ?」
「あはは、邪魔でしかないに決まってるだろ?」
「あ、あはは……ま、まぁまぁ、そういう時もあるって。ドンマイ椿!」
「殴る」
「ぎゃっ! ちょちょ、京都まできて流血沙汰はヤバいから! 椿落ち着けって! 百合子ちゃんも、見てないで止めて!」
私は黒瀬くんの背後にいるからその顔を見ることはできないけど、対峙している萌黄さんの顔は、目に見て分かるほどに蒼ざめている。
必死な形相でヘルプを求めてくる萌黄さんが不憫に思えてきたので、間に入って黒瀬くんを何とか宥めてから、美代さんと皇さんが待っているという卓球スペースに向かうことになった。