逃げられるものならお好きにどうぞ。
「ちょっと、来るのが遅いじゃない! って、……何よ。椿のやつ、何であんなに不機嫌なわけ?」
「えーっと、その……まぁ、色々ありまして」
美代さんは黒瀬くんの機嫌が悪いことに、すぐに気づいたみたいだ。
――まぁ、あれだけあからさまにふくれっ面をしていたら、気づくなという方が難しいのかもしれないけど。
「まぁいいわ! ほら、早く卓球しましょ!」
薄紅色の浴衣を可愛らしく着こなしている美代さんは、黒瀬くんの機嫌の悪さには一切触れることなく、卓球のラケットを手にして、やる気満々といった様子だ。
「にしても、卓球なんて久々にやるなぁ」
黒色の浴衣を着ている皇さんは、温泉に入ったからだろうけど、いつもは長い前髪を上げるようにセットされているのに、今は垂れ下がっている。
漂う色気がいつにも増して凄まじい。
というか……黒瀬くんもそうだけど、萌黄さんも皇さんも、皆顔立ちが整っているから、浴衣が物凄く似合って見える。
着用している本人の為に作られた浴衣だと言われても信じてしまいそうなほどのしっくり具合だ。