逃げられるものならお好きにどうぞ。


そのまま店を出て、ぶらぶらと当てもなく辺りを散策する。



「お姉さん、何処か行きたいとことかある?」

「……それじゃあ、」



黒瀬くんの言葉に私が選んだのは、此処から電車で三駅のところにある、美術館だ。



黒瀬くんは美術館なんて柄じゃないだろうし、嫌がるか、先に帰ってしまうかのどちらかを選択すると思っていた。

けれど予想に反して、黒瀬くんは不満の一つも言うことなく私の後をついてきた。



「へぇ、綺麗な絵だね」



美術館に入場した現在も、嫌な顔一つすることなく、静かに絵画や彫刻を見て回っている。



そして何事もなく二人で館内をぐるっと見て回り、美術館を出れば、辺りはすっかり薄暗くなっていた。


家まで送っていくと言う黒瀬くんと一緒に、人気のない道を並んで歩く。

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