逃げられるものならお好きにどうぞ。
「おや、目を覚ましたんだね」
重たそうな鉄製の扉を開けて入ってきたのは、スーツ姿の糸目の男性。――私を拉致した張本人だ。
その後ろには、ガラの悪そうな男たちをぞろぞろと引き連れている。
「いやぁ、手荒な真似をしてすまなかったね。ただ俺たちは、君に、皇組の若頭についての情報を教えてもらいたいだけなんだ。君、あそこの若頭とは懇意にしているんだろう? もしかして、愛人か何かかな?」
「……」
「あぁ、大丈夫。大人しく教えてくれるなら、君を傷つけたりはしないよ」
カツカツと足音を響かせながら歩いてきた糸目の男性が、私の目の前で屈んだ。
口調も穏やかで柔和な笑みを浮かべているけど――本能で分かる。
この人が、この場で一番逆らっちゃダメな人だって。