逃げられるものならお好きにどうぞ。
「うーん、そっか。……うん、分かったよ」
私の目の前で屈んでいた男性は、顎に手をそえて何か考え込んでいたかと思えば、おもむろに頷いて立ち上がった。
――納得して、もらえたのだろうか。
「じゃあ、彼の弱点はいいや。その代わり、あそこの忠犬について、知っていることを教えてもらってもいいかな?」
「……忠犬?」
「あぁ、そうだよ。皇慎二が飼い慣らしている男のことは、君も良く知っているよね? 確か名前は……黒瀬って言ったかな」
聞こえてきた名前に、心臓がドクンと大きく鼓動を打った。
動揺を悟られないように、平静を装って素知らぬ顔をする。