逃げられるものならお好きにどうぞ。
「あちゃー。あれは完全にスイッチ入っちゃってるね」
「あそこまでタガが外れちゃってる椿見るのも、久しぶりね」
「……って、萌黄さんに、美代さん!? いつの間に……!」
「百合子ちゃん、大丈夫だった?」
「はい、私は大丈夫ですけど……」
――本当に、いつの間に居たんだろう。
私の手足の拘束を外してくれる美代さんにお礼を言いながら、もう一度黒瀬くんのいる方に視線を移した。
変わらず黒瀬くんが優勢なようだ。今なんて、背後から鉄パイプを振り下ろそうとしていた男の攻撃をノールックで躱して、逆に殴り返しているし。
……まさか、後ろに目でも付いているわけじゃないよね?
「あと数分もすれば片が付くんじゃない?」
「そうね。ただまぁ、たったの数分で椿の気が済むかっていったら……それは分からないけど」
「あー、確かに」
「そん時は、アンタが何とかしなさいよ」
「えー、おれ? ……おれ、無事に生きて帰れると思う?」
「アンタなら大丈夫よ」
――それにしても、萌黄さんも美代さんも、黒瀬くんの暴れっぷりを目の前にして、どうしてこんなにも平然と話していられるんだろう。
さっき美代さんは、こんな黒瀬くんを見るのは久しぶりって言っていたけど……もしかしたら、以前はよく見られていた光景だったのかな。