逃げられるものならお好きにどうぞ。


「椿の奴は俺が何とかするから、大丈夫だ。嬢ちゃんは先に外に出て待ってな。……美代。嬢ちゃんのこと、頼んだぞ」

「はっ、はい、慎二さん! ほら、百合子ちゃん! 行きましょ。椿も、それにアイツらも……慎二さんに任せておけば大丈夫だから」

「っ、はい……」



美代さんに背を押されて、後ろ髪を引かれながらも、倉庫を後にする。

出入り口のところでチラリと振り返れば、黒瀬くんが相手の男に馬乗りになって殴りかかろうとしているところを、皇さんが羽交い絞めにして止めているのが見えた。



「椿、落ち着け!」

「っ、離せ! コイツら、百合子さんに……! この程度で許せるわけねーだろ。俺がこの手で、死んだほうがマシだと思わせてやる……邪魔すんじゃねーよ!」



耳にしたこともないような荒っぽい声で、怖い顔で、皇さんを睨みつけている。


――今の黒瀬くんは、本気で人ひとり殺しかねないような。そんな危うい雰囲気を纏っている。



「ちょっと、百合子ちゃん!?」



それに気づいてしまったら、このまま自分だけこの場を離れるなんて、出来るわけもない。

美代さんの呼びとめる声を無視して、私は黒瀬くんのもとへと走る。

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