逃げられるものならお好きにどうぞ。

修羅場は御免と寂しい横顔



月末の繁忙期を乗り越えて、今日は待ちに待った休日だ。


数週間前にネット通販で購入した下ろし立てのワンピースを着て、最近お気に入りのテラコッタカラーのルージュを口元に引いて街に繰り出せば、数メートル先に、見知った後ろ姿を見つける。



――あれは、黒瀬くんと……隣には、綺麗な女の人。彼女だろうか。



気づかれないように素通りしようと、黒瀬くんたちがいる通路とは反対の右端に寄って、まばらな通行人に紛れるようにして俯き気味に歩く。



「っ、あんたみたいなクズ男、こっちから願い下げだから‼」



黒瀬くんたちの横を無事に通り過ぎて、そのまま振り返らずに進んでいれば、背後からそんな怒鳴り声が聞こえてきたものだから――思わず後ろを振り返ってしまった。


そうすれば、黒瀬くんと一緒にいた女性が怒り顔でこちらに向かって歩いてくるのが見える。

そのまま私の真横を通り過ぎて行った女性を見送って、黒瀬くんの方に視線を向けてみれば――。



「っ、いつからそこに……!?」



気づけば私の目の前に、黒瀬くんが立っていた。

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