逃げられるものならお好きにどうぞ。
もう隣の存在は気にしないことに決めて、観たいと思っていた映画のチケットを券売機で購入していれば、これまた当然のように私の隣の座席を人差し指でタップして、何故か二枚分のチケット代金を黒瀬くんが支払ってくれる。
「……あの、黒瀬くん。自分の分は自分で払うから。そういえばこの前のランチも、結局お金返してなかったし……」
取り出した財布から紙幣を何枚か抜き取ろうとすれば、黒瀬くんに手で制される。
「それじゃあお姉さんは飲み物奢ってよ。俺、コーラがいいな。あ、あとポップコーン食べない? 半分こしようよ」
「……まあ、いいけど」
完全に黒瀬くんのペースに乗せられていることには、私も気づいている。
だけど抵抗する気力もなければ、持ち前の面倒くさがりの性格も相俟って、最終的には(まぁいいか)と大抵の小さなことは流れに身を任せちゃうんだよね。
……私のこういう部分って、長所でもあり、短所でもあるんだろうな。