逃げられるものならお好きにどうぞ。


劇場内の売店でコーラとアイスティーと、黒瀬くんご所望のキャラメルポップコーンを購入し、順番にお手洗いを済ませてから、これから観る映画が上映される三番スクリーンに向かう。


公開されてからもう一か月以上経っているからか、シアター内は思っていたより混んでいなくて、人はまばらだった。



「お姉さん、ポップコーンは俺が持ってるから。好きに食べてね」



私の左隣に座った黒瀬くんが、右手にポップコーンを持って声を掛けてくる。



「……黒瀬くんってさ、何で私のこと、“お姉さん”って呼ぶの?」



何となく気になって聞いてみただけだったけど、黒瀬くんはほんの一瞬、驚いたように僅かに瞠目して――けれど直ぐにいつもの読めない笑顔を浮かべて、小さく首を傾げた。

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