逃げられるものならお好きにどうぞ。
***
「百合子さん、お待たせ」
待ち合わせ時間ぴったりに、黒瀬くんはやってきた。
いつもは私よりも早くに来ていることがほとんどだから、珍しい。
「黒瀬くん、今日はどこかお出かけでもしてたの?」
「うん、そう。さっきまで皇さんと一緒だったんだ」
「そっか。皇さんたちとも旅行以来会えてないし、また皆でご飯でも食べに行きたいね」
「そう? むしろ俺は、百合子さんと二人きりの方がいいけどね。というか、百合子さん?」
「え、何? ……あ」
何かを訴えるような目でジッと見つめられること、数秒。
そのまなざしの意味に気づいた私は、ぎこちない笑みを浮かべながら、求められている言葉を口にした。