逃げられるものならお好きにどうぞ。


「……ねぇ、椿くん」

「ん? なぁに、百合子さん」

「……私、椿くんのことが大好き」



椿くんを見上げていたら、何だかきゅうって、胸が苦しくなってきて。訳も分からず泣いてしまいそうになってしまって。

――多分、これが愛しいって感情なんだろうな。



「……うん。俺も、百合子さんが大好き。百合子さんがいてくれれば、他に何もいらない。一生大切にするって約束する」



私の言葉に、きゅっと眉根を寄せた椿くんは、切なさと愛しさが混じり合ったような顔をして目を細める。

熱を帯びた目が、私を捉えて離さない。



「百合子さん、愛してるよ」

「……うん、私も」



椿くんの背中に手を回す。それが合図。

――長くて甘い夜の、始まりだった。

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