逃げられるものならお好きにどうぞ。


「椿の分は貸しだからな」

「……えぇ、マスターってばケチだな」

「当たり前だろ。いいから、さっさと帰って休め」



マスターに見送られるまま店外に出て、近場まで呼んでおいたタクシーに乗り込む。



「黒瀬くん、家の場所言える?」

「んー……」



熱があるせいで眠たいのか、とろんとした目をしている黒瀬くんは、いつもよりゆったりとした口調で何とか住所を口にした。

行き先を聞いた運転手は、直ぐに車を発進させる。



そして、夜の街を走ること十数分ほどで、タクシーは停車した。

< 46 / 58 >

この作品をシェア

pagetop