逃げられるものならお好きにどうぞ。


***


「……ん」



椿が目を覚ませば、そこは見知らぬ部屋だった。

重たい瞼をゆっくり持ち上げれば、視界いっぱいに染み一つない真っ白な天井が広がる。



寝かされているベッドはふかふかで、掛けられている毛布はあたたかい。

手を動かして違和感を感じる額に触れてみれば、そこには冷えピタが貼られている。


よく見れば、自身が着ている衣服も見慣れないものだった。誰かが着替えさせてくれたみたいだ。



ベッドから起き上がって寝室らしき部屋を出れば、リビングにはお姉さんがいた。


こちらに気づいて近づいてくる。




「黒瀬くん、目が覚めたんだね。具合はどう?」



その声音や表情からは、純粋に自分の身体を気遣い、心配してくれていることが伝わってくる。

< 48 / 81 >

この作品をシェア

pagetop