逃げられるものならお好きにどうぞ。
***
「……ん」
椿が目を覚ませば、そこは見知らぬ部屋だった。
重たい瞼をゆっくり持ち上げれば、視界いっぱいに染み一つない真っ白な天井が広がる。
寝かされているベッドはふかふかで、掛けられている毛布はあたたかい。
手を動かして違和感を感じる額に触れてみれば、そこには冷えピタが貼られている。
よく見れば、自身が着ている衣服も見慣れないものだった。誰かが着替えさせてくれたみたいだ。
ベッドから起き上がって寝室らしき部屋を出れば、リビングにはお姉さんがいた。
こちらに気づいて近づいてくる。
「黒瀬くん、目が覚めたんだね。具合はどう?」
その声音や表情からは、純粋に自分の身体を気遣い、心配してくれていることが伝わってくる。