逃げられるものならお好きにどうぞ。
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「俺、こんな風にお祝いしてもらったの、初めてだよ」
二人でシチューを食べ終えた後、黒瀬くんには家にあった市販の風邪薬を飲んでもらった。
熱を測ってもらえば、体温は三十七度二分と微熱程度まで下がっていたから安心した。
そのまま流れで並んでソファに座り、バラエティ番組を観ながらコンビニのショートケーキを食べてまったりしていた中、黒瀬くんがポツリと呟いたのだ。
「その……しょぼくてごめんね?」
貧相な誕生日にがっかりしたのかと思って謝罪の言葉を口にすれば、黒瀬くんは緩く首を横に振る。
「違う、逆だよ。……こんなに嬉しい誕生日は初めてってこと」
そう言って口許を緩ませた黒瀬くんは、優しい顔で笑っていた。
黒瀬くんが心から喜んでくれていることが伝わってきて、何だか私まで嬉しくなってくる。