逃げられるものならお好きにどうぞ。
“椿を元に戻す方法、知りたくない?”
――あの夜、憂美さんに告げられた言葉。
その言葉の信憑性を測りかねていた私は、身内である佐々木ちゃんなら、何か知っていることがあるんじゃないかって……思わず聞いてしまいそうになった。
でも、佐々木ちゃんの笑顔を曇らせてしまう可能性のある言葉を、口にしなくてよかった。
“私ね、知ってるのよ。記憶をおかしくしちゃう薬を裏で流している人たちについて”
もし佐々木ちゃんが何も知らないのだとしたら、危ないことに巻き込んでしまう可能性だってある。それだけは絶対にダメだ。それに……。
“私ね、そっち側の人間と繋がりがあるの。貴女のこと、紹介してあげてもいいわよ?”
お姉さんが裏社会の人たちと繋がりがあると知ったら、驚くかもしれないし、ショックを受けるかもしれない。佐々木ちゃんを悲しませるようなことは、したくはない。
でも、憂美さんの話に信憑性はない。全て嘘の可能性もある。本当に椿くんの記憶を戻す方法を知っているのか……それに、裏社会という存在に、怖気づいてしまう自分がいる。
私は憂美さんからの誘いに答えを出せないまま、今日も悩み迷っていた。