逃げられるものならお好きにどうぞ。
消えない過去と君のいる未来
憂美さんに言われた通りに、狭い路地裏を進んでいく。
歩いていれば、足元に何かが当たった。
下を向けば、潰れた空き缶や紙屑、果物の芯みたいな生ごみなんかまで散乱している。
踏まないようにと足元にも注意しつつ歩いていけば、突き当りの左側に扉があった。
そばには黒いスーツ姿の細身の男性が立っている。
「……此処に何の用だ」
目が合った男性に、鋭いまなざしを向けられる。
多分だけど、堅気の人ではないだろう。
纏う雰囲気からして、危ない感じがする。
「この扉の先に、用があってきました」
「合言葉は」
「……defect of memory.」
男性は私の頭のてっぺんから足先まで、品定めするような目で見てきたかと思えば、くるりと背を向けて扉を開ける。
「ついてこい」
そう言って、扉の先に進んでいった。
私は男性の後を追いかけるべく、緊張や恐怖で震えそうになる足を、何とか前へと踏み出す。
扉の先にあったのは、どうやらゲームセンターのようだ。
だけど、すでに閉業しているみたい。
中身が空っぽで停止しているクレーンゲームやメダルゲームなんかが、置いたままになっている。
ビルの中はガランとしていて、人の気配もない。
その静けさに、却って不安をあおられる。