逃げられるものならお好きにどうぞ。
「そ、それよりも、美代さんとはどういう関係なの?」
空気を変えようと、パッと頭に浮かんだ話題を口にすれば、黒瀬くんも話に乗ってくれて、絡み合っていた視線もすんなりと外された。
内心でホッと息を吐きながら、黒瀬くんの話に耳を傾ける。
「美代さんは、俺が家を転々としてた時期にお世話になってた一人だよ。そこそこ長い間世話になってて、あのバーにもたまに顔を出しにくるんだよね。あとはまぁ……俺の副業の、仕事仲間なんだ」
「副業って……さっきのバーとは別の?」
「うん」
美代さんが仕事仲間の、副業。
一体どんな仕事をしているのか、全く想像がつかない。
「副業って、何してるの?」
気になって直接聞いてみれば、黒瀬くんは言葉を選ぶようにして口を開く。
「んー、まぁ……色々? 雇い主に頼まれたことを言われたままにやる仕事、かな」
――普通にはぐらかされてしまった。これは、詳しく教えてくれる気はないんだろうな。
まぁ誰にだって言いたくないことの一つや二つあるのは当然だし、無理に聞き出そうとは思わないけど……どうしてだろう。
また、モヤモヤしたものが胸の中に広がっていくのを感じる。