Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「空汰―――…?」
彼が探る様に目をあげ、けれどすぐに
「俺はただ……て言うか、免許証の写真を無断に撮るひとには言えないな~」と彼は斜め上に視線を向け、しかし本気でそう思っているわけじゃなさそうだ。
「そうですか」
あたしは心音からのメール受信の画面を見て、
「あなたのこと全て知ってます。たった今“友人”が調べてくれました。
あなたが現在どこに住んでるのか、クレジット情報からどこで何を買い、何を食べたのか詳細に。年上の女性と一緒に暮らしているらしいですね。
あら、あなた過去に少年院に?
今も更生することなく、詐欺まがいなことをなさっているようですね。
御立派な経歴ですね」
心音からのメールを読み淡々と告げ皮肉たっぷりに言い切ると、彼は少し顔を青くして顎をひいた。
「個人情報だろ。違法行為じゃ?」と彼はたじろいだ。
「違法行為?最初に違法行為を犯したのは二村さんの方では?あなたは二村さんに雇われただけですよね」
あたしが被せると、彼は大きなため息をつき、肘をテーブルに着きながら額に手を置き
「教えるからさ、サツに突き出すのは勘弁」
と本性をさらけ出し、気取った物言いから、急にくだけた感じで申し出た。
「幾らですか?幾らで雇われたのですか」あたしが聞くと
彼は二本の指を立てた。
二万―――……たった二万で啓と、あたしたちの関係を裂こうとしたのか。
なんて安い。
あたしたちはそんな安っぽい関係と見積もられたのか―――