Fahrenheit -華氏- Ⅲ
ここから話はちょっと複雑になる。
覚悟しておけよ、お前らっ!酔っぱらって次の日「記憶にございません」とか言わせないからな!
と言いつつも、飲まなきゃやってらんねーって俺が一番思ってたり。
俺はすでに三本目のビールを空にしかけていた。
まずはそうだな、神流派と緑川派の派閥が存在することは説明するまでもなく三人とも知っていたが。
だが年若い俺たち…特に裕二や桐島には縁遠い話だが。
「つまり、派閥がひっくり返って緑川さんと二村くんが結婚したら、二村くんは社長になれるかも、ってこと?」と桐島がするめをかじりながら言う。
お前が言うと緊張感が半減するのは何故だ…
「まぁそう言うこったな」
「それにしては随分遠回りだよな。そこで何でお前と柏木さんを引きはがす必要がある。柏木さんに緑川さんを近づかせるな、と言った理由も分かんないし」
裕二が缶ビールをぐいと煽り、しかしそれは残り少なかったようで、すぐに缶をふらふらさせ、諦めたように新しい缶に手を伸ばそうとしたが
「もうそろそろ焼酎にすっか。啓人付き合えよ。氷」
裕二が手のひらでひらひら。
「へいへい」俺は言われた通り冷凍庫を開きペールにアイス(氷)を入れる。
「あ、私もそろそろワインにするわ~グラス貸して」と綾子の声が掛かり
「スルメ、もうない?」と桐島。
お前ら……マイペース過ぎるんだよ!この危機的状況分かってんの!?
俺は目を吊り上げたが
「しんみりしてても仕方ないだろ。事態は動き出してんだし」と裕二が苦笑い。
「そうそ、悩んでても進まないよ?」と桐島はのんびり。
「お前ら…」
ホントいいヤツらだな…
と思ったが
「飲まなきゃやってらんないわよ!」
ガンっ!
綾子が缶ビールをテーブルに叩き付け、そっちの方が本音だろうな…と思ったり。
てか綾子、お前怖ぇえよ。