Fahrenheit -華氏- Ⅲ
綾子が裕二の焼酎ロックを作りながら…て言うかこいつって意外と尽くす系??
「裕二の言った通り、回りくどいし意味があるのかしら」と首を捻る。
「確かに一見して回りくどく見えるな。普通に考えると例え派閥がひっくり返ったとしても緑川副社長が『はい、すぐにあなたが社長です』てわけにはいかないだろうし、それを考えると二村がトップに立つのは何十年かあとになる」
「でも啓人は普通と考えてないんだ」
桐島はおっとり言って、スルメを諦めてチョコレートに手を伸ばす。
「ああ、あいつは回りくどいことしない。じゃないと、今俺と瑠華を引き離す意味がない」
それと―――これも憶測だが、アイツは俺に個人的恨みを持っている。
身に覚えはないが、俺が幸せなのがどうしても許せない、と感じた。
「お前と柏木さんのタッグが後々に自分の立場に影響してくるから、とか?」サンキュ、と綾子から焼酎を受け取った裕二が目を上げ
「後々なんて考えてねぇよ、あいつは。
水面下でひそかに動き、仕掛けるときは一気にしかけてくるアロワナみたいなヤツだ、あいつぁそういうヤツだ」
俺が三人を睨み見据えると、俺の言葉が本気だと受け取ったのか、三人の視線が俺に集まった。
「瓜生常務と鴨志田監査役の『会食』の件、綾子覚えてるか?」
「ええ……あれは瓜生常務付きの高野くんが言ってたわ。高野くんが把握してなかったスケジュールだからプライベートだと思ったみたいで、彼はあまり気にならなかったみたいだけど……」
言いかけて、ハッとしたように顔を上げ
「あの時、確かその後村木部長と
―――二村くんも揃ってその料亭に入っていったって…」