Fahrenheit -華氏- Ⅲ


俺はゆっくりと三人を見渡し


「ああ、これはあくまで俺の仮説だが、シロアリ緑川はパパに二村との交際を話していない、と言ったが、もしかして二村が直接副社長に言ったのかもしれない。


神流の中枢の出世頭で、あの口のうまい二村が副社長に何か吹き込んだのだろう。


そう言う意味であいつは天才だ。人に取り入る―――才能」


それは一種カリスマ性がある。


「鴨志田監査役を使って、瓜生常務に取り入ったんだ。瓜生常務は今はそれ程力がないとは言ってもやはり大株主の一人、その他の大株主たちと横の繋がりは途切れていない筈」


「なる程、その“内緒話”をカモフラージュする為、村木を呼んだわけ、か」裕二がメガネのブリッジをくいと上げる。銀縁のフレームがきらりと光った。


「そしてその話がうまくまとまったのかどうか確認する意味で二村クンがついていった」


桐島はやや冷めた視線で床に座った俺たちを見据える。


「あくまで村木次長は彼らの話を信じているのね。でも啓人、あれほど嫌ってた村木次長の話を何で鵜呑みにしたの」


綾子がワイングラスを傾け、体育座りをしながら首を傾げる。


「何で……って」


俺は返答に困った。


言えるわけ―――ない…


だけど


「何よ!男でしょ!ハッキリしなさいよ!」バシッと背中を叩かれ、


いってぇな!綾子!


「そうだよ、何隠してるのか知んねーけど、全部教えてもらわなきゃどう出るか分からねぇじゃないかよ」と裕二が援護射撃。


あーもぉ!


俺はヤケになって


「あいつ(村木)は自分の娘と俺を結婚させようとしてたの!」


と叫んだ。


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