Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「「「う゛~ん」」」
と全員が唸る様に首を捻ったが
桐島が思いついたようにポンと手を打った。
「切り札、かぁ。それと関係してるかどうか分からないけど
そう言えば、二村くんたちが異動になったぐらいの時かな、証明活動があったよ。偶然かどうか分からないけれど」
「「「証明活動??」」」
俺らは桐島に注目した。
「内容は?」
「俺はそこまで読んでなかったけど、女の子たちは『社内の公平化がどうのこうのって…桐島主査は仕事もできるし、何で未だに“主査”止まりなんだ。って不公平じゃないか』って」
「なる程、外堀から埋めていくってことか。発起人は二村だな。
良い意味でも悪い意味でも親父はワンマン。成績の良い人間が出世していく。目先の数字だけしか見えていない。
なのに会長の息子と言うだけで部長席に居る俺や、知り合いと言う理由で瑠華が肩書を持っていることに不平不満を抱く社員は少なくないよな」
「で?お前はそれに署名したのかよ」裕二が桐島を見上げる。
桐島は肩を竦めた。
「まさか。署名した後、面倒事に巻き込まれるのは御免だからね」
桐島、そう言うヤツだよ!お前は。でも理由がどうであれ桐島は署名しなかったことがちょっとありがたかったり。
綾子は「そんな署名活動、秘書課に回ってこなかったわよ。まぁ流石に秘書課は会長付きの秘書も居るしおおっぴらにできないって理由もあるだろうけど」と苦笑い。
「当たり前だが俺の所にも回ってきていない。だが経理部の連中はほとんど署名したに違いない。あのいけ好かない経理部長が陣を取ってるからな」
俺は以前、緑川がやらかしたミスで経理部と一揉めしたことがある。
「システムの方もそうだ。年齢的に主任に選ばれた俺のことよく思ってないヤツは多い。現に俺はそんな署名活動がされていたことすら知らなかった」裕二は肩を竦めた。
「なる程、それで瓜生常務と鴨志田監査役の繋がりが分かった」俺が腕を組むと
「何で?」と綾子は目をまばたいた。