Fahrenheit -華氏- Ⅲ


AM08:15-


俺たち……俺と裕二、そして村木は時間差出勤をしてブースに到着すると、すでに瑠華―――…だけ…?


が出勤していて


「おはようございます」とそっけなく挨拶をされた。


はじめての週明け。二日ぶりに見る瑠華は―――


やっぱりきれいだった。


ラベンダー色の総レースが上品なブラウスと同じ色のスカート。


ナチュラルなのか手抜きなのか(このひとの場合面倒って言う理由もあるけれど)決して派手じゃないメイクなのに、すっげー可愛いし。


栗色の髪は今日はストレートでそれも新鮮で。


ああ…二日…


たった二日


でも俺にとっては二日“も”瑠華に会えてない事実に、胸が締め付けられる。


「あ、おはよー……」俺の挨拶もぎこちなくなる。


「こ、コーヒー飲もうかな…」さっき飲んだばかりだからそれ程欲しいわけではないが、この場を逃れる口実が欲しかった。


逃れ―――たいのだろうか。


ホントの所はずっと瑠華を見つめていたい。隣にいたい。


けれど、今は――――…まだそれができない。


給湯室に向かおうとすると


「私が淹れてきます」と瑠華が隙のスの字もなくスっと立ち上がる。


「あ、はい…」と返事をするしかできない俺…


ダメだな、俺。俺の方が動揺しまくりじゃん。瑠華は通常に戻りつつあるって言うのに…


瑠華が席を外したところを見計らってか、或は本当に偶然か


二村がひょっこり顔を出した。


「おっはよ~ございま~す!」朝から妙なテンションなのかこいつの素なのか、それとも何か企んでるのか、俺にはもう


分からない。


「部長、金曜日の新しい“彼女”とのデート、うまくいきました?」


金曜日のデートと言うのは、俺がついた適当な嘘だ。


「まぁな、守備はそこそこって感じだ」


俺はまたもテキトーな嘘をついた。週末は男四人で飲み会(綾子もオトコのカウント)だったし。


「そうなんですね~、俺も柏木さんが新しいオトコとイチャついてるの見て、ちょっとびっくりしちゃったんです~」


二村はわざとらしく驚いた顔をつくる。


嘘が透け透けに見える―――





「ほら、これ!俺が“偶然”通ったときに見ちゃって、“思わず”撮っちゃいました!」


と二村が顔を輝かせて興奮気味にスマホで撮った画像を俺に見せる。


そこには瑠華と―――



彼女の額にキスを落とす









の姿を見て思わず目を開いた。



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