Fahrenheit -華氏- Ⅲ
こんな……疑心暗鬼になること―――
マックスとの関係を疑うのとまた種類が違って、胸の奥がぎゅうぎゅう締め付けられる。
苦しい。
考えたくないのに、気を緩めるとすぐに瑠華と、あの写真に写っていた男のあれこれを想像してしまう自分に嫌気を覚えつつも、
何とか三時間は仕事を進めた。
ちょうど二人(瑠華と佐々木)が昼休憩に入ろうとしているときだった。
俺のデスクの電話に内線電話が掛かってきたナンバーは『902』
綾子のナンバーだ。
俺は慌てて取ると、
『私よ、今しかないわ。早くきてちょうだい』と短くせっかちに言われ
「了解」
俺は短く返した。
昼休憩に入ろうとしている瑠華と佐々木に向かって
「悪い、会長室に急用が入った。席を外すから電話番していて欲しい」と申し出ると、二人は顔を合わせ、それでも特別不審がった様子もなくすぐに頷く。
俺が席を立ちブースから出てフロアの扉を開けようとしたところ、ちょうど村木が携帯で電話をしながら
「かしこまりました、大至急お調べいたします。少々お時間をいただいても?」
とファイルを手に同じように扉に向かってくる。
村木は俺と目を合わすことなく、
「失礼」とIDカードをカードリーダーにかざして、さっさと出ていく。俺のこと気にも留めてない様子だ。俺も村木に続いて廊下に出た。
すぐ前を歩く村木は携帯を耳から外しスーツの胸ポケットに仕舞い入れ、俺の方を振り返った。
「なかなかな小細工ですね。役者になれるんじゃないですか?村木サン」
俺が皮肉を込めて後ろから声を掛けると、村木は本気でムっとしたように顔をしかめた。