Fahrenheit -華氏- Ⅲ
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ひやりと冷気を感じて、身震いをしながらあたしは目を覚ました。
“あれから”一体どれぐらいの時間が過ぎたのだろう。
気付くと、部屋の明かりを付けたまま眠ってしまったようで、重くてだるい体を何とか起こし、ゆっくりと辺りを見渡した。そこが自分の部屋……リビングだと言うことを認識するのに少しの時間を要した。
傾く視界の中、何とか壁掛け時計を視界に収める。
アナログ時計の秒針は6時20分を指していた。
「6時20分…朝の……?」
当然だ。
あたしが飲み始めたのは昨夜20時過ぎ。
悲しみや苦しみが押し寄せてきて、胸を押しつぶされそうになって、
いっそ消えてしまいたいと願っても
消えることなんてできなくて、
朝はやってくる。
視線をあちこちに這わせると、まずすぐに飛び込んできたのは投げ出した腕から床に敷いたラグに染みわたった赤黒い染み。そしてその近くに転がった割れたワインボトルとグラス。
腕に走った真一文字の赤い傷、そして逆のてのひらから流れた血液は乾いて固まっていた。
そして数秒遅れでやってくる痛み…
「っつー……」
は傷の痛みじゃなく、頭痛。
アルコールか薬のせいだろうか。ああ、そう言えば昨日頭をテーブルにぶつけたんだ…
と認識するのに数秒…いいえ、数分を要した。
頭を押さえながらも、ゆっくりと起き上がる。
「6時半…」
時計を見て時間を再度確認する。
「……仕事」
無意識に呟いた言葉。
シャワー浴びなきゃ…化粧も…髪も…
ほとんど本能と言うのか、無意識にあたしはふらつく足でふらふらとバスルームに向かっていった。
昨日と同じ、熱い温度のシャワーを浴びながら
別に…
有休溜まってるし、休めばいいじゃない。と言う自分がそっと囁くけれど、その囁きにあたしは頭を振る。
だめよ、だめ。
こんなことでくじけてたらダメ。
自分に言い聞かせる度、今度はガラスで切った場所が、今更のように疼く。
傷痕は固まった血液を流して、切り口だけが露わになった。