Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「「いただきます」」と言って二人で食べ始め、パスタを食いながら…「うん、思ったよりイケる味」と思いつつ
「ねぇ、何で俺たちが別れた理由―――聞いてこないの?」と俺は気になったことを聞いた。
パスタをフォークに巻きつけながら、瑞野さんの方を見ずに。
瑞野さんは俺と瑠華が付き合ってたことを知っていたかどうか…
いや80%以上の確立で知っていたに違いないだろうけど(言うまでもなく二村がそう言ったのだろう)
瑞野さんのフォークの動きは止まった。
「いえ……気軽に聞いて良い内容じゃありませんし…それこそ無神経って言うか」
瑞野さんは慌ててオレンジジュースのグラスを手に取ったものの、ジュースは底をついていて
「あ、すみません。ドリンク取ってきますね」
と慌てて席を外した。
「なぁなぁ今のすっげぇ可愛い子じゃなかった?」
と斜向かいに座った大学生っぽい男女四人が彼らの横を通り過ぎた瑞野さんの背中を見送りながらちょっと身を乗り出している。
「うー、匂いもいい」
「何なのあんたら?ああゆうのがタイプ?」と女の方がちょっと目を吊り上げる。
「いかにもあざとそうじゃん?ああゆう女にコロっと騙されるんだよね~オトコってのは」
「うっせ。お前らみたいな色気がないヤツより、多少あざとくても男はああゆうのが好きなんだよ」
「会社のネームプレート下げてなかった?近くのOLかな」
「OL!いい響きだな!」
「やだー、最低!だいたいあーゆうタイプて男なら誰にでも愛想振りまくんだよ」
「何が最低なんだよ。あんな可愛い子と毎日顔を合わせられるなら仕事も楽しいじゃん」
「そうそ、ちょっとチェックしてみてみようぜ~就活候補に入れるようぜ」
「動機が不純過ぎるし、あんたらなんて遊ばれてポイだよ。
ああゆうタイプってさ持たせるだけ気をもたせて、“あたしモテてるでしょ”みたいなー」
彼らが噂話をしているさなかに瑞野さんが返ってきた。
彼らの噂話が耳に入っていたのだろう。瑞野さんは耳に髪をかけながらキマヅそうにしていた。