Fahrenheit -華氏- Ⅲ

「ええ…大いに」


あたしは財布から一万円札を取り出すと


「これは超過料金です。わざわざ日曜日にありがとうございます」と言うと


「律儀だね~、瑠華ちゃんは。俺にとって平日も休日も同じようなもんよ?つまり年中休日ってこと」と言いながらもちゃっかりと一万円札を懐にしまう葵さん。


あたしは「ふっ」と笑った。


「何?」と葵さんが興味深そうに頬杖をついてあたしを見てくる。


「いいえ、こうまでハッキリしていると、扱いやすいなと思いまして」


思わず素直に言ってしまったが葵さんは気を悪くした様子もなく


「だってそれが“仕事”でしょ~?歩合制って言うの?」


「ええ、お金が目的の方が私にとってはやりやすいので、その制度は大変ありがたいです」と大真面目に言うと


「あはは!」と葵さんはまたも豪快に笑った。


「瑠華ちゃんて面白いね~」


「面白いは褒め言葉じゃありません」何度このやり取りを繰り返したか。


「だって褒め言葉じゃないもん。食いもんにしてる女には言わないケド、瑠華ちゃんは別だし」


「私も食いもんでは?」


ようやくあたしは皿に乗った焼き鳥の一本に手を伸ばした。


鶏もも肉の塩味。


それはあたしがさっき丸こげにした角煮とは形も味(は食べてないから分からないケド)全然違った。


まともに今日、食事を口にした気がする。


大げさな程に美味しいとは言い難いが、それなりに美味しかった。


その姿を頬杖をついたままじっと見つめてくる葵さん。


「何か?」と目で聞くと


「何かさ~、こないだも思ったけど瑠華ちゃんが食べてるところってエロいよね」


は――――?


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