Fahrenheit -華氏- Ⅲ
裕二はちょっと同情気味で俺の肩に腕を回すと
「まぁまぁこれでも見て気ぃ紛らわせろ?」と言って一枚のCD?DVDを手渡してきた。
透明のプラスチックケースに入ったディスクには何も書かれていない。俺は思わず顔をしかめた。
「またお前は!俺はアダルトDVDなんて求めてないっつうの!」とそれを押し退けると
「誰がエロDVDだと言った。これはこないだのハロウィンパーティーで撮った写真だ。お前早く帰っちまっただろ?柏木さんもお前に続くように帰っちゃったし、その後の展開がどうなったか知りたくないんか?」
そう言われ、俺は目を開いた。
綾子からは特に問題なかったと聞かされたが、綾子が知らないうちに何かあったかもしれないし。
「まぁ?俺も?変な空気は感じなかったけどな。瑞野さんは二村たちより綾子にべったりだったし、二村と緑川さんも二人セットだったし。
これは桐島が撮ったの。記念に~ってな具合で」
ナイス桐島!
「お前は?その写真を見たんだろ?何か気付いたのか?」
俺が聞くと裕二は小さくため息。
「全然。ごく自然な光景だった。けど参考程度にお前にも。お前だったらあの三人に近いし、微妙な違和感とかに気付くかもしれないしな」
微妙な―――……違和感…?
俺がそのCDROMを受け取るとほぼ同時に村木が戻ってきた。
話し合いも終わったことだし、切り上げるのにちょうどいい。
伝票を手に取り、会計レジまで向かいごく自然にカードを取り出すと
「ちょっと待ってください」と村木が軽く手を上げた。
『何スか?』と言う意味で俺が目を上げると
「ここの支払いはあなたが持つ、と?」
「はぁ、そうですが。だって急に呼び出して無理言った俺が悪いし」
そもそも危ない綱渡りに無理やり引きこんだしな。こいつにとってこれぐらいじゃ足りないだろうが。
「割り勘にしましょう」
キッパリと言われた言葉が意外過ぎて俺は目をまばたいた。