Fahrenheit -華氏- Ⅲ
綾子と談笑してるであろう瑞野さんに、二村は切な気と言うか悲し気な、……複雑なその視線は彼女に向いていた。
だが瑞野さんは気付いていない。
二村は―――……
俺はそこから慌ててその他の画像を、それこそ穴が開く程見た。
どれも自然で、ありきたりな社内飲み会と言った感じに見えたが、その何枚かやはり二村の視線が瑞野さんの方に向いていた。
瑠華はジョーカーに会うと言っていた。
さっき見た男が瑠華のジョーカーであれば、
俺にとってのジョーカーは
瑞野さんだ。
ちょうどビールが空になった。思わぬ発見に興奮していたのか、もっと強い酒を求めて俺は書斎を出ようとしたところ、携帯が不在着信のランプでピカピカ光らせていたことに気付いた。
不在着信:紫利さん
となっていて、俺は慌ててコールバック……しようと思ったが、よく考えると日を跨いでいる。流石に紫利さんも家に帰っているだろう。旦那も居るだろうし、また俺が連絡して亀裂を入れたくない。
しょうがない、明日にすっか…
と思っていると、
TRRRR…
着信:紫利さん
ぅを!何てナイスタイミング!