Fahrenheit -華氏- Ⅲ

瑠華との運命は残酷だと感じたが、紫利さんとの運命はロマンチック……とも違うな。


『ケイト?』


「うん、コールバックしようか悩んでたんだけど、紫利さん今どこ?」


別に後ろめたいことをしてるわけではないのに、何故か声を低めてひそっと聞く。


けれど紫利さんの方は堂々としたもので


『今から帰るとこ』


「店に戻ったって本当のことだったんだね」


『だから、私に協力求めてきたんでしょうが』紫利さんがちょっと語気を強めた。


「はい、ごめんなさい」


俺、女に謝ってばっかだ。


ふぅ、と紫利さんは小さくため息をつき


『さっき……瑠華ちゃんから電話掛かってきたわよ。11月11日、神流グループの役員接待の予約が入ってないかって』


え―――……


『私は知らないフリをしたけれど、まぁ実際まだ予約が入っていないしね』


「俺は瑠華に喋ってない」


だとしたら瑠華はどこで11日の役員招集のことを知ったのか―――


一瞬ちらりと思ったのが、心音ちゃんの仕業だと思った。


神流グループのPCにハッキングしたか……そのデータを瑠華に渡した?


いや、例えハッキングしたにしろ彼女らがあの日に的を絞ることはできない。俺たちが罠を仕込んだのは今日(正確には昨日)の午前中。


瑠華は入社してまだ半年だ。


入社して四年目の俺ですら、役員の繋がりを把握できなかった。


村木のおかげで絞れたわけだが。


罠を仕込んでからの短時間でそこまで調べられるわけがない。


心音ちゃんじゃない―――とすると……


俺はハッとなって目を開いた。





ジョーカー


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