Fahrenheit -華氏- Ⅲ
紫利さんと電話を切ったあと、本来の目的であったビールの次の酒を求めてリビングを素通りしてキッチンに向かおうとした。
が、ふとソファに掛けられたブランケットがだらりと床に垂れていて、
ああ、またこんな風にしてたら瑠華に怒られるんだろうなーと思いながら、ブランケットを畳んでソファに戻す。
ここで―――
俺たちは隣り合って、たくさんの映画を見た。
古い映画から新しい映画まで。
瑠華は俺のワイシャツ姿で、きれいな脚で斜め座りをしていて、ポッキーを食べていた。
脚を組んで瑠華の背に腕を回し座っていた俺のすぐ横で俺の肩に頭を預け、それがいつの間にか俺たちのベストポジションになっていた。
ローテーブルには彼女が好きなフルボディの赤ワインのグラス。
映画は、深夜に流れていたものを録画してあって、CMになると、ポッキーの箱を俺に向け
「ん?」と彼女が目を上げた。
「ん」
俺も短く言って、瑠華が差し出してくれたポッキーを口にした。
ポキっとポッキーの軸が折れ、口に含むと思いのほか甘い味が口いっぱいに広がった。
それはガツンと渋みのある赤ワインと最高のマリアージュ。
俺は瑠華の髪を何度も撫で、顔を引き寄せた。