Fahrenheit -華氏- Ⅲ
『Let me see. I 'm very close to the teddy bear my mom gave me.(あのね、ユーリはママがくれたクマちゃんと仲良くしてたの)』
あたしはうんうんと頷いた。涙が混じった声を悟られないように頷くだけに留めて置いた。
『Though, My grandma took my teddy bear away from me.(でもね、おばあちゃんに取りあげられちゃった)』
ユーリの声がしゅんとなった。
Grandma(お祖母ちゃん―――)ジェシカ―――
そう言えば、今ユーリはマックスとジェシカと暮らしている。ジェシカの夫でマックスの父親のウィリアムと一緒に。
あたしの涙は一瞬だけ引っ込み、その代わり唇を強く噛んだ。
『My grandma bought me a doll and a big house instead of a teddy bear.(お祖母ちゃんはね、クマちゃんの代わりにお人形買ってくれたの。大きなお家も)』
ユーリは確かにお人形が大好きだった。昔はよく二人でお人形遊びをしたものだ。
ユーリが喜びそうなものを与えたジェシカ。大きなドールハウスも貰って嬉しいだろうけれどユーリの声はどこか冴えなかった。
『I would rather have the teddy bear my mom gave me than the doll my grandma bought me.(ユーリはお祖母ちゃんのくれたお人形よりママのクマちゃんの方がいい)』
ユーリ……
あたしは思わず口元を覆った。
『But then my dad snuck my teddy bear back and hid it in the closet.(だけどね、パパがクマちゃんをこっそり取り返してくれて、クローゼットに隠したの)』またもユーリの声が弾んだ。『Don’t tell anyone(内緒だよ)』と付け加えて。
マックスが―――…?
あたしは、目を開いた。