Fahrenheit -華氏- Ⅲ
分からない―――
瑞野さんの気持ちが分からない。
「―――…ちょう、部長」
呼ばれてはっとなった。
「ち、近いです」
瑞野さんに指摘され、思いのほか俺が瑞野さんに迫っていたことに気付き「ぅを!」と声を出しちまった。
慌ててベルスターを押し桐島を呼ぶ。
メニュー表を掲げてこそっと打ち合わせ。
「何がオススメ?」と一応聞いてみるも
「何があったの?」と桐島がこそっと聞いてきて
「いや、まだ何もないが」
「じゃぁ何で呼んだの。俺だってそんな暇じゃ…」
「何かキマヅクなっちゃって、何とかしてくれ」
「何とかって…」
こそこそやり取りをしていると
「あの」瑞野さんの声があがり、俺はびくびくぅ!
「飲み物お代わりいいですか?」
桐島はすぐさま営業スマイルを浮かべ「瑞野さんはあんまりお酒強くないでしょ?ここからここまで女の子が好きそうなドリンクだよ」と説明をしていて、その隙に
「何とかしてよ」と目合図。
「分かった」と俺もこくこく頷いた。
そんなやり取りがされてるとは知らず瑞野さんは桐島が指し示したメニューを律儀に眺めていて
「じゃぁピーチフィズにします」と答えていた。俺の方も空になっていたからな結局、生をもう一杯頼んで、瑞野さんと改めて二人っきり。
桐島が来てくれたおかげでいくらかキマヅイ雰囲気が和らいだ。
桐島の店をチョイスしておいて良かった~…