Fahrenheit -華氏- Ⅲ
手つかずだった刺身の盛り合わせ、マグロを一切れ箸で取り
「あの……さっきのあたしの質問ですが、部長はあたしに質問ばかりで」
「ああ、ごめん。こっちも色々気になったからサ」
ぐいと焼酎を呑みこむと
「……すみませ…」
瑞野さんはまたも顔を伏せ、そしてピーチフィズを飲む。
泣かせちゃったらどうしよう……と言う不安からか、俺の方が慌てた。
「いや、言い方が悪かった。その…別れた理由は、別れる前に派手に喧嘩したの。
ほら、俺は見ての通り短気だし、向こうもかなりキツイところあるしな」
すまん瑠華…キツイとか言って。
でも半分当たってるけどな。
瑞野さんは俯いていた顔を上げてまっすぐに俺の方を向いた。
「あたしは部長から『手頃な所で手を打って新しい彼女を作るとかない』と言われました」
うん、言った。
確かに言った。
「正直言うと、『あー…あたしって軽い女に見えるんだな~…』って思ったら何だか腹が立ってきて」
「いや、そんなつもりで言ったわけじゃなく」
あの時はただ、瑞野さんが怒って帰ってくれることを期待していたが、怒ってるには怒ってるが彼女は気にしない素振りでついてきた。
瑠華とは違う―――強さのある女だ。
「ごめん……あの時の俺、何か苛々してて瑞野さんに当たっちまった」
テーブルに両手を付き頭を下げる。
テーブルを挟んだ向こう側で瑞野さんが慌てた気配があった。
「いえ……!あの…でも、その後ファミレスであたしのこと軽い女じゃないって怒ってくださったじゃないですか。
あたし、嬉しかったです。
軽く見られてたんじゃない、何か違う意図があったんだ―――て」
瑞野さんは
鋭い。