Fahrenheit -華氏- Ⅲ
それから俺は、その手の話題から逃れる為に、適当に話題を振った。
「このレバーペースト、マジで旨いんだ。食ってみてよ」と勧めると瑞野さんは大人しく手を伸ばし、クラッカーを口に入れる。
「美味しい」とにっこり。
気付いたら瑞野さんのピーチフィズは底をついていた。
「お代わりどうする?そろそろソフトドリンクに…」
正直、瑞野さんがどこまで飲めるのか良く分からない。さっきは薄めにと桐島に頼んだが、もしかしてもっといける口なのかもしれない。
「お代わりは同じものを。気に入っちゃいました」と瑞野さんはグラスを掲げお代わりのドリンクを頼むことに。
その時に桐島はお洒落なカクテルグラスにこれまたオシャレに盛りつけられたチョコレートを運んできた。
「?頼んでないけど」
「これは俺からのサービス」と桐島は俺に笑いかけ
「アルコールの中和にはチョコレートが効くから」と俺にこそっ。
なるほど、こいつもそれなりに心配してたってわけね。
桐島が立ち去っていった後、瑞野さんは俺たちが実際何を話していたのか気付いていない筈だったが
「部長たち同期は皆さん仲良しですね」と目をまばたいて微笑する。
「え?そうかな…ふつーだと思うケド」
「そう言えば二村と緑川さんも同期だったよね。君らはどうなの?」
暗に二村との仲を探ってる―――とは見せないようにして、何でもない様子でさらりと語りかけた。
「あたしたちはそれ程…会ったら挨拶する程度で、たまにランチに行くぐらい」
その答えに、ちらりと気になって俺は瑞野さんの首元を見た。