Fahrenheit -華氏- Ⅲ
タクシーで20分弱で到着したその場所は東京都でも一等地。お金持ちの住宅が並ぶ田園調布。
入り組んだ一方通行の道をくねくねと入り込み、拓けた場所に『邸宅』と言う言葉がしっくりくるような豪華なおうちが見えた。
背が高いコンクリートの塀から上品な木々の葉がゆらゆら揺らいで塀に影を落としている。
その奥に、これまた立派な二階建ての住まいが見える。広く取った窓からオレンジ色の光が漏れていた。
凝ったデザインの黒いアイアンの門扉の横にインターホンが備え付けられていて、それを押すと
『はい』と相変わらずいつ聞いてもステキな重低音があたしを迎え入れてくれる。
自動式のアイアンの門扉がゆっくりと開き、あたしはその敷地の中に足を踏み入れた。
上品なこげ茶の扉は年代を思わせる。邸宅自体は建て替えたと言っていたが、この扉だけは気に入ってそのまま使ったとも聞いていた。
その扉が外側にゆっくり開き
「いらっしゃい瑠華ちゃん、早かったね。どうぞ中へ」
とおじさま―――…いいえ
神流会長
が、笑顔で迎え入れてくれた。