Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「それは後程お話しいたします。
そもそも何故外資物流本部から会長室に渡った稟議を、他部署である彼が覗き見ることができたのか。
ここで一つの罠」
あたしは人差し指一本を立てた。
「瑞野さんが情報を流していたかどうかを知りたかったんです」
おじさまは深いため息をつき、ソファに背を預け天井を見上げた。
「まさか、あの瑞野くんが―――……」
「信じがたいでしょうが、80%以上の確立でそうです。
二村の頭の良い所は女性を手玉にとって、スパイまがいなことをさせてる、と言うことです。
瑞野さんには非がない、とは言い切れませんがすぐに処分することはおやめください。このタイミングでの異動は二村に疑われます」
あたしの発言におじさまはゆっくりと頷いた。
「そして第二の罠」
あたしは二つの指を立てて、
「確かにそのオークション自体は本物ですが、私の友人に手伝ってもらってリゾート開発のオークションの裏で、裏オークションが開催されると噂を流しました。
勿論、そんなことはしませんのでご安心を」
「それで…?」とおじさまが覇気のない返答であたしの顔を見てくる。すでに「何故?」とは聞いてこなかった。先を早く知りたいのか、色々諦めたのか。
「二村はまんまと罠に掛かりました。私がいざオークションを進めようとするとき、
書類にあなたのサインが必要になる」
ここでおじさまははっきりと目を開いた。