Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「桐島、お前がついていながらどうしてそう言う事態になるんだよ」と裕二が桐島を睨み
「桐島くんだって仕事があるでしょ!不可抗力よ」と綾子が裕二にチョップ。
「綾子ちゃん、ありがとね」と空気を読めない桐島は綾子に、にこにこ。
ダメだ、ここもカオスだ。
バッ!!
俺は立ち上がった。
「ど、どーした?」と裕二が俺を見上げる。
「出回った噂はそうそう消沈しない。俺以上のビッグなネタがないとな」
「「ビッグなネタ?」」裕二&綾子が顔を合わせ
「俺たちが付き合ってるって言えば、それで消せるか…?」
「いや、流石にそこまでしてもらうワケにはいかねぇ」
「じゃーどうするって言うんだよ…」
「とりあえず、瑠……柏木さんの耳に入るまで何とか食い止めたい」
「食い止めるって、どうやって」と綾子が目を上げる。
分かったら苦労しねぇって…
と弱腰。
とりあえず―――俺は胸ポケットに仕舞い入れた瑞野さんのリングを手に取り
これを返しがてら、昨日の言葉
『好きです―――』
の深意を聞きたい。
聞いた所でどうにかなるもんでもないし、確認してしまったら本当に後戻りはできない。
けれど、手の中にある“これ”が彼女の深意をあやふやにぼやかせてる。
昨日のあの言葉が本意なのか―――
未だ俺には
分からない。